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グロスグロックナー (2)





グロスグロックナー山岳道路
 Grossglockner High Alpine Road (2)
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§ ハイリゲンブルート Heiligenblut にて

 ハイリゲンブルートは、かってパステルツェ氷河によって造られた渓谷の中にある。 その谷間には、今も氷河を源とする小川が流れている。

 その小川の右岸に沿って僅かばかりの平地があり、下流に行くほどに、左岸にも少しずつ平地が現れてきているが、いずれにしても渓谷の中であるから大きくはない。

 下の村の家々は、そのような谷間の平地に、主に右岸に沿って細長く点々と連なっている。 当然ながら後は山が迫り、分け入る道すらない。

 どちらかというと左岸には平地が少なく、すぐに渓谷の斜面が立ち上がるが、そこを切り欠くように幹線道路が走っている。 そして、上の村というのは、その道路に沿って宿場町のようにして、斜面に張り付いたり、土台を築いて立ち上がったりしているようだ。








橋の上から見る小川の流れ
橋の上から  2007/06/10 5:59pm

 夕食がてら、レストランまで散歩に出かけた。 お世話になった民宿は、小川の両岸に平地が広がる付近にあった。 即ち、村はずれということだ。

 道路から川辺に到る段差は 1m もないかも知れない。 数段の石段を降りると手で水に触れることが出来るが、足元が危ないので止めた。

 したがって、冷たいか熱いか分からないけれど、氷河の水が熱い訳がなかろうと思う。 魚の姿は見られなかった。














 近くには、小さな牧場があったり、畑があった。 といっても、小川と道路の間に牛が数頭いるだけである。 対岸の斜面には牧草が広がっていたから、そちらが本格的な牧場であろう。

 上の村と下の村を繋ぐものは、上の村から降りて来たときに渡った上流の橋と、この宿のすぐ近くに在る橋だけである。


 レストランは、歩いて15分ほどのところにあった。 その横はオートキャンプ場になっていた。 キャンピングカーが数台停めてあった。

 大きくて、なかなか立派な建物である。 初めから、ここに決めておけば歩く必要がなかったのであるが、これも縁のものであるから仕方がない。

 マスターは、若旦那であるようだが、友人と立ち話が中断できないのか、注文も聞きにこない。 アイコンタクトを送るが届かない。



 まだ、シーズンオフのようで、お客も数組だけだったが、それも皆さん顔見知りのようである。 それを、いちいち声をかけに行くから、いつまで立っても切りがない。

 早く話が終わらないかと待っていたら、若旦那の父親らしき人が注文を聞きに来た。 今はシーズンオフなのでメニューは少ないがと言っていた。 なかなか感じのよい人で、接客の何たるかを知っている。 若旦那は、まだまだ修行中かもしれない。 それでも、英語が通じないので、もたもたしていると、若旦那がやってきた。 べらべらの英語で説明してくれた。

 料理を運んできたのも、若旦那の方であった。 やれば出来るではないか。 しかし、それが済むと、また食事をしているお客のところまで足を運んで、話しに夢中である。 しまいに、父親もその会話に加わったりしている。

 これが普通の付き合い方なのかも知れない。 私は、注文を急ぎ、食べることを急ぎ、早々と済ませなければ気がすまない性質である。






折鶴のこと
 選択の余地がないメニューではあったが、ボリュームたっぷりで、美味しかった。 気をよくした家内は、若旦那に折鶴を折って見せた。 それを取り囲むようにして見ていた中の一人が、如何にも欲しそうな顔をしていたので、その人にも作ってあげた。 皆さん大喜びであった。

 
 勘定を済ませ、店を出て歩き出していたら、後から呼び止められた。 あらためてお礼を言いに追って来たようである。 ベルギーから来たとのこと。

 ツルは、英語ではクレーン crane であろう。 いわゆる建設機械のクレーンというのは、ツルのように首が長いからである。 ところが、私の発音が悪いのか通じないことが多い。 それを、スワン swan と言えば皆さんすぐに納得したから、これまでスワンで済ませることが多かった。

 ところが、この人は初めから、これはクレーンか? と聞いてきた人だ。 どこかで見たり聞いたりしていたものを、初めて手にしたときの嬉しさのようなものが、満面に現れていた。






まだまだ明るい
まだまだ明るい  2007/06/10 8:14pm
 食事が終わって、帰りの道も、まだまだ明るい。

 渓谷なので陽が陰るのは早いが、見上げる空は日暮れの気配ではなかった。 午後8時を過ぎていた。

 見知らぬ地で出逢った人たちとの交流は楽しい。 気持ちのよい、満足感のある散歩となった。





 明日は、いよいよ期待の山岳道路に向かう。

 あした天気になぁ~れ!







§ ハイリゲンブルートからグロスグロックナー山岳道路への道へ

グロスグロックナー山岳道路の標識
2007/06/11 8:56am
 ハイリゲンブルートの下の村から上の村に出て、更に上りの道に進むと、グロスグロックナー山岳道路の標識があった。 フッシュ Fusch まで 40km とある。

 このフッシュ Fusch は、以前、この峠越えを目指したものの、雪崩のため道路が閉鎖されており、やむなく引き返したところである。

 今回は、その逆のコースを辿ることになる。









料金所付近からハイリゲンブルートを望む 2007/06/11 9:06am
 この標識を過ぎると、道はいよいよ高度を増して、ハイリゲンブルートの村は、棚引く霞の下にあった。

 そして、料金所を通過すると、ハイリゲンブルートの村も、これが見納めである。 車を停めて別れを惜しんだ。






 昨日、山小屋から眺めた村の姿よりも、さらに小さくなって、そのシンボルである教会も、今や定かではない。

 cf. ハイリゲンブルートの街並み








 ハイリゲンブルートの料金所を通ってしばらくいくと、グロスグロックナー山岳道路は分かれ道に出る。

 一つは、フッシュ Fusch に到る峠の道で、もう一つは、フランツ・ヨーゼフ・ヘーエ Kaiser-Franz-Josefs-Hohe に到る道である。




 フランツ・ヨーゼフ・ヘーエには展望台があり、パステルツェ氷河 Glacier Pasterze とグロスグロックナー Grossglockner 3,798m の偉容が眺望できるところであり、いわばこの山岳道路の目玉である。

 外す訳には行かないが、しかし、登山道は別にして、この道は、そこで行き止まりである。 峠越えをするには、また、この分岐点まで戻ってくる必要がある。 片道 10km 弱であろうか。











§ フランツ・ヨーゼフ・ヘーエ Kaiser-Franz-Josefs-Hohe 2,369m

 Hohe とは "高いところ" という意味であるから、"フランツ・ヨーゼフ皇帝の高地" と言うものであろう。 かって、皇帝がこの地を訪れたことがあるのだろう。 私も、また、この展望台からの眺望を写真で見て憧れていた。 いつか訪れて見たいと。

【補注】 Grossglockner High Alpine Road のパンフレットより引用
 オーストリアの最高峰グロスグロックナーは、東アルプスの中でも最高峰であり、聖なる山 "holy mountain" とされている。 1800年に初登頂された。

 1856年に、フランツ・ヨーゼフ皇帝とエリザベート皇后 (愛称シシー sisi) が、この地をハイキングして以来、"フランツ・ヨーゼフ・ヘーエ" と呼ばれるようになった。

 ちなみに、パステルツェ氷河 Pasterze glacier は、東アルプスで最長である。
 

 残念なのは、氷河が大きく後退していることである。 かっては、この展望台の真下まで迫って、ケーブルで降りれば氷河に立つことが出来た筈である。 メール・ド・グラス氷河 シャモニ のように。





フランツ・ヨーゼフ・ヘーエの展望台からの眺め
(パステルツェ氷河と、左端がグロスグロックナー)
Kaiser-Franz-Josefs-Hohe 2,369m
2007/06/11 10:17am Photo by Kohyuh












立て看板の下のアルプスマーモット
 やけに目立つ立て看板があった。

 どうにも写真の邪魔になるが、よほど珍しいな動物なんだろうか。










 断崖の下を覗くと直ぐに見つかったが、警戒心も薄いようで、また、動作ものろい。 一匹でいた。
 

 むかし見たモルモットは、ハムスターのようで、大きさも、その程度のものと思っていたのだが、それとは全然違った。 ヌートリアの倍ほどもある。 アルプスマーモットと言うらしい。












フランツ・ヨーゼフ・ヘーエの展望台からの眺め
Kaiser-Franz-Josefs-Hohe 2,369m 2007/06/11 11:35am Photo by Kohyuh




 屋上に上がると、キバシガラス がいた。 シャモニにもいた。 見た目はカラスであるが、私にとっては懐かしい。


 この展望台に併設されている展示室を見学したあと、食堂で軽い食事を摂った。 窓からは雄大な山容が見渡せる。 延々と続く トレッキング・コースも見える。 いつまで見ても見飽きることはないが、峠越えの道も待っているから、腰を上げた。








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