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グロスグロックナー (1)





グロスグロックナー山岳道路
 Grossglockner High Alpine Road (1)
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 ウィーン Wien に予定より2日ほど早く到着したのも、それなりに寄り道をしないで来たが、当初のドライブ計画に余裕を持たせていたからである。

 ルートはあらかじめ決めることが出来るが、それに要する時間はいい加減なもので、高速道路を使わなければ 30km/h とか、日本を想定して計画を立ていた。 高速道路があっても地道を行くのが私の主義だからである。

 ところが、道路状況は日本よりいいところが多い。 幹線道路でなくとも日本の高速並みに走れるというか、追い立てられるようにして、とろとろとは走らせてくれないのであった。 だから、予定より早く走ったというのも、早く着いた理由の一つになるかも知れない。

 当初は、このウィーンからミュンヘンへ最短距離で行くルートを計画していた。 ミュンヘンでレンタカーを返却するのが契約である。

 さらに、予定を早めた理由は、もう一つあった。 密かに期待していたのであるが、できれば "グロスグロックナー山岳道路" を通って、ミュンヘンへ行きたかったのである。 そして、その決断は、ウィーンに着いてから検討することにしていたのである。





§ 何故に、グロスグロックナー山岳道路なのか
 このグロスグロックナー山岳道路による峠越えは、前にブルック Bruck 側からリエンツ Lientz へ抜けるために、一度試みたことがあった。

 それが雪崩のために通行止めになっていて果たせなかったのである。 その残念な思いが "機会があればもう一度" と、ずっと胸の奥でくすぶっていた。

 "逃がした魚は大きい" という心理が働いたかも知れないが、車に乗り始めた頃より、舗装道路よりラフロード、トンネルより峠道が好きだった。

 その当時、車といえば、ラリーに人気があった。 現在のように、車を足代わりに使うのではなく、遊びに使うのである。 その影響を受けて、よく真似事もしたし、今も、その気持ちが残っているのかも知れない。

 cf. 峠道は閉鎖中






 前のときは、5月の開通直後であったから雪も多かったのだろう。 それが、今回はそれより一ヶ月遅いので、雪崩で道路が閉鎖になるようなことはないはずで、期待は余計にはずむばかりである。

 そのこともあって、心が先へ先へと進んでいたのかも知れない。 ウィーンから2泊3日もあれば、寄り道しても十分、予定のコースへ戻ることが出来ると踏んだ。





グロスグロックナー山岳道路
 オーストリアのブルック Bruck から、リエンツLienz まで、ホーヘ・タウエルン国立公園 Hohe Tauern Natiomal Park を縦断する峠越えの道である。

 そして、3.000m 級の山々が連なる中を、その心臓部にあるオーストリアの最高峰グロスグロックナー (3,798m) 及び、その横を流れるパステルツェ氷河 Glacier Pasterze へと誘ってくれる世界でも有数の山岳道路である。

 全長48km、峠の頂上 Hochtor は、標高 2,504m である。 それを少し下がったところにある Edelweiss-Spitze 標高 2,571m に上れば、そこが最高到達点であり、360度のパノラマが眺望できる。

 当然ながら道路は曲がりくねっている (36 bends) が、舗装されて道幅も広く、随所に展望台が設けられており、全体的には非常に走りやすい。






§ ハイリゲンブルート Heiligenblut
グロスグロックナー山岳道路
 05/01 - 06/15 :  6:00am - 8:00pm
 06/16 - 09/15 :  5:00am - 9:30pm
 09/16 - 10/31 :  6:00am - 7:30pm
(注) 閉門時間の45分前に締め切られる。
 ウィーンを経って途中一泊して、ここハイリゲンブルートに着いたのが、2007/06/10 お昼前である。









 この少し先にグロスグロックナー山岳道路のゲートがある。 いつも通行できるものではなく、また、有料道路である。 通行料金は、28 euro/day (2007/06/11現在) であった。






ハイリゲンブルート Heiligenblut の名前の由来
 神聖な (heiligen) + 血 (blut)、即ち、"キリストの血" という意味である。
 10世紀の頃、ビザンチン(東ローマ)帝国の官吏ブリッキウスが、この聖なる血を持って旅をしていたが、冬の寒さで、この地で行き倒れた。

 彼と聖なる血のために建てられたのがヴィンツェンツ教会 St. Vinzenz という訳である。

 [引用] 地球の歩き方より









§§ あれがハイリゲンブルートか?

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滝が見えた
2007/06/10 Photo by Kohyuh
 確かに、グロスグロックナー山岳道路のゲートはハイリゲンブルートにあるが、ここから急に山岳道路になるのではない。

 ここに到る前から、既に、ホーヘ・タウエルン国立公園の中にいたのである。 その峠越えの道を辿っていたのである。

 それは刻々と変わる車窓からの景色が教えてくれていた。 舗装道路の快適な道は、益々高度を上げていった。 今まで、直線的だった道も、カーブが多くなった。

 既に、険しい峠道の様相で、左手には岸壁がいよいよせまってくる。 右手に見えるのは、急斜面に拡がる牧草の緑だ。 山小屋も見える。






 前方に滝が見えた。 岸壁の中腹から吹き出るように白いしぶきが落ちていた。 車道は道幅が広く、車の往来も少なかったので、写真を撮ろうと思い立ち、右に車を寄せて停まった。

 すると、気がつかなかったが、滝に見とれている間にバイクの一団が、すぐ後ろについて来ていたのであろう、ブーイングの警笛が鳴った。








Grosglockner1
ハイリゲンブルート近郊 2007/06/10 Photo by Kohyuh
 何も無理をしなくても、先に駐車できるスペースがあったのである。

 ともかく、ブーイングを受けるような運転はいけない。

 そういえばツーリングを楽しむ姿は、このルートに入ってから、度々見かけるようになっていた。










 みなさん慎重に追い越していった。 私が気を取り直して、再び走り出すと、突如、前方に雪山が見え出した。 この辺りがハイリゲンブロートか。








§§ 評判どおりの美しさ

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ヴィンツェンツ教会 St. Vinzenz ハイリゲンブルート オーストリア
Heiligenblut, Austria 2007/06/10 Photo by Kohyuh
(尖塔の右後方にあるグロスグロックナーは雲に隠れて見えない)
 ここハイリゲンブルートは、登山や トレッキング など、観光の一大拠点となっている。

 また、高級ホテルから、民宿や山小屋まで、宿泊設備も十分整っているようだ。



 今日は、ここに泊まることにした。

 今からでも、時間的には余裕をもって峠越えができるが、天候が思わしくないのが最大の理由である。

 山で視界がゼロという、悔しい経験を何度もしているからだ。

 とは言え、明日は更に悪くなるという可能性もある。 晴れの補償は何もない。










 こちらの天気予報は日本より当てにならないし、大体、天気予報自体あまり放送されていない。 予報というより、ライブカメラで各地の空模様を伝えているようで、正確ではあるが、これは予報ではない。

 今、視界がゼロと分ってどうする。 明日のことが知りたいのである。






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顔を出したグロスグロックナー
(クリックで拡大する)
 山の天気は、凶と出るか吉とでるかで、また、大違いである。 それでも、明日に賭けて見たのは、このハイリゲンブルートの教会を見たからとも言える。

 何しろ、グロスグロックナーと氷河を背景にして、谷間にたたずむ姿が誠に美しい。

 このまま、素通りして行くにはもったいない気がしたからである。 それに、その名前の由来を知れば、なるほどと思わせる、いわくありげな雰囲気があった。



 ただ、この日のグロスグロックナーは、雲の動きによって、顔を出したり、隠したりで、おいそれとはその威容は拝めなかった。














§§ ハイリゲンブルートの街並み
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ハイリゲンブルートの街並み (山小屋からの眺望)
2007/06/10 Photo by Kohyuh



 ここハイリゲンブルートで泊まるとなれば宿探しをせねばならない。

 ハイリゲンブルートの街並みは、教会を中心とした "上の村"と、谷間を流れる川に沿って在る "下の村" からなる。

 上の村は、高級ホテルや土産物店が立ち並ぶ、いわばメインとしての村の顔である。

 一方、下の村は、民宿やキャンピングカーの宿泊地など、庶民的な村ということが出来ようか。














 早く着いたことでもあるし、この時期は、まだ観光客も少ないはずであるから、宿は選り取り見取りであろう。 まずは、ぐるりと一周回ってみることにした。

 といっても、高級なところを探すのではない。 あくまで、安くていいところを探すのである。 すると気になる山小屋が眼に入った。 それこそ見上げるような山の中腹に、ぽつんと、あった。






§§§ 山小屋の道
Grosglockner_heiligenblut2
上の村から山小屋を望む
2007/06/10 Photo by Kohyuh
 山小屋とは願ってもないことである。 車だからこそ、利用できるもので、歩いては、とても行く気にならないところにある。 山に来たのなら、都会のようなホテルでは意味がない。

 また、小型車であるから、少々の狭い道でも、山坂でも、何ら問題はない。 それが思ったより急坂であった。 しかも、へアピンカーブの連続で、もちろんガードレールもない。 道は舗装されていたので路肩が崩れる心配はなかったが、家内が横で、きゃぁきゃぁ騒いでおる。

 私の運転技術を信用していないようだ。 運転席からは分からないが、助手席側から窓の外を見れば、路肩が見えず、すぐ、すとんと、谷底が見えるだけであったろう。

 

§§§ 山小屋は山小屋
 山小屋に着くと、車が一台置いてあり、老夫婦が庭のベンチに腰をかけてくつろいでいた。 ここに泊まることは出来るのかと聞くと、もちろんOKといって玄関の方を手で差し示した。

 それでも、特に案内してくれる様子もなかったから、泊り客というより、ハイキングか散歩でもしてきたのだろう。







 それではと、玄関を覗いて見ると、登山靴やらヤッケやらがいっぱい干してあるのが眼に入った。 しかし、声をかけても誰も出てこなかった。 また、隣にも同じような山小屋があったので覗いて見たが、様子は同じである。

 このまま、ここで待っていてもらちが開かないようなので、諦めることにした。 眼下に見える街並みが美しく見えたから、下の村もいいな、と思うようになった。 下から見上げたときは、憧れの山小屋のように見えたのに、実際に来て見るとそれほどでもない。 何でも、こんなもんだろう。 "隣の芝生は青い" というものである。

 それにしても、ここからの眺めはすこぶる良い。 上の村も下の村も、ハイリゲンブルートの街並みの様子がよく分かった。











§ 今はシーズンオフ?
 このときは未だ、宿は直ぐに見つかるだろうという思いがあった。 何しろ選り取り見取りのはずであるから、とにかく気に入った宿を探そうと走り回った。 隣村まで行って見たが、宿はあるにはあるが、どれも鍵がかかっていて取り付く島もない。

 どうやらシーズンオフで、民宿は未だ閉めていると、ここに到ってはじめて気がついたのである。 ならばと、"下の村" に行くことにした。 この下の村を後回しにしていたのは、ここなら必ずあると踏んでいたからである。


 その導入路の傍にある民宿の佇まいが気に入ったので車を停めた。 玄関を入って見るが、ひっそりとして人の気配がなかった。 それでも声をあげてみると、中年の男が出てきた。  その様子を見て、これは駄目だなと思った。 とても営業している格好ではなかったからである。 それでも泊まれるものかどうか聞いて見た。

 やはり閉めているとのことであった。 ならば、食事もできて、宿泊もできる所をどこか紹介して欲しいと頼んで見た。 すると、下の村を指差して、『あの赤い屋根が見えるだろう。 その隣が多分開いている』 と教えてくれた。


 それらしき方向に赤い屋根がいくつか見えたが、大体の見当がついたので行ってみることにした。 その行き方も教えてくれたので良かったが、かなり大回りしなければ行けない。 川を渡らなければならないようで、単純に見た眼の方向では迷子になる。





§§ おばちゃんと眼が合った
 それらしきところまで来たら、案の定、赤い屋根はいくらでもある。 遠くから見たらそれと分っても、近づいてみるとさっぱり分らないものである。

 それでも、食堂があって宿泊もできそうなところが一つ見つかった。 まだ、他にもあるのかもしれないと、物色しながらゆるゆる進んでいった。 ちいさな民宿が並んでいた。 どれもひっそりとしていた。


 普通ならば、宿泊客がいると、庭のベンチでくつろいでいたりするものだ。 それがなかったのである。 そろそろ引き返そうかなと思ったとき、2階のベランダからおばちゃんが顔を出した。 思わず、そのおばちゃんと眼が合ってしまった。

 戻ろうかと思っていたところであるが、出逢いとはこんなものである。 これも何かの縁と思って、ここに泊まることにした。 おばちゃんも嬉しそうであった。


 夕食のために、どこかレストランがないかと聞くと、先ほど通り過ぎたところのものであった。 やはり、ここしかなかったようである。 宿泊もできるものであった。





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